無料のWorPressテーマとして絶大な人気の「 Cocoon」がエックスサーバー社に譲渡されました。
Cocoonは私もブログを始める際にたいへんお世話になった素晴らしいテーマです。
開発者のわいひらさんが「誰にでも自由に使える無料テーマ」ということにこだわり個人で開発してきたテーマですが、頸髄損傷による障害の中、無理を重ねて継続されてきたようです。
Cocoonはダウンロード数が200万件を超える人気WordPressテーマで、さぞかし高く売れるだろうと思いますが、今回は売却ではなく、譲渡というかたちで、今後も無料テーマとして提供されます。
その理由には、開発者の人柄や思いが表れています。
その辺についてまとめました。
エックスサーバーへのCocoon譲渡について
譲渡のポイントと今後はどうなるか
- 「Cocoon」の所有権がエックスサーバーに移った
- 「Cocoon」は今後もGPL100%のWordPressテーマとして提供される
- 「Cocoon」の開発および公式サイトの運営は引き続きわいひら氏を中心に行われる
- エックスサーバー社は、技術・ノウハウ提供等を通じて「Cocoon」の開発・運営を全面的にサポートしていく
- 「Cocoon」の寄付特典機能はすべて開放され、全機能を無料で利用出来るようになった
「100% GPL」とは
出典:「100% GPL」とは
CSS・画像・音声ファイル・アイコン・フォントなどすべてのアセットに対して GPL または GPL 互換ライセンスを採用することです。
簡単に言うと、複製、再配布、改変等が自由にできるということです。
言い換えると、誰でも開発を引き継いで配布することができるようなかたちです。
無料で利用できるようになった寄付特典
寄付特典は、Ccoonに寄付(金額)を行った人がコード入手して、エディター内のいくつかの機能を利用できるといった仕組みのことです。
これが、誰でも利用できるようになりました。
- FAQブロックの追加(FAQリッチスニペット対応)
- HTML挿入機能(文章にHTMLを挿入する機能、※ショートコード)
- 投稿・固定ページの更新日を表示するショートコード
- ウィジェット表示設定の「カスタム投稿タイプ」で表示切替
エックスサーバーに事業譲渡されるまでの経緯
- 2014年7月 わいひら氏がWordPress無料テーマ「Simplicity」公開
- 2018年3月 「Simplicity」の後継としてWordPress無料テーマ「Cocoon」公開
- 2018年12月 WordPressでブロックエディターが正式採用される⇒開発負担が跳ね上がったとのこと
- 2019年7月頃 わいひら氏に異所性骨化という難病の症状が現れる
- 2021年7月 WordPressテーマ「SWELL」と業務提携
- 2022年9月 エックスサーバーに事業譲渡
開発者のわいひら氏について
開発者わいひら氏の略歴です。
プログラマー、ブログ運営者、投資家。
出典:エックスサーバー公式サイト
大人気WordPressテーマ「Cocoon」を開発、無料で提供しており、常にユーザーファーストな姿勢から多くのWordPressユーザーに愛されている。
また、ブログを中心としたサイト運営、Webプログラミング・Windowsソフトの開発などITの世界で幅広く活動。
頸髄損傷による身体障害を負いながらも、意欲的な開発活動、独自の目線によるデバイス活用法をブログで発信するなど、技術面にとどまらない人としての魅力で注目されている。
わいひら氏のブログ「寝ログ」
事業譲渡となった理由
わいひら氏はCocoonの開発・運営をほぼ個人開発で行ってきました。
ところが、2018年、WordPressでブロックエディターが新しく採用されたことで、開発負担量が跳ね上がったそうです。
その上、難病が原因による骨折、手術などが重なり、収益も少ない無料テーマの開発を続けていくのが非常に厳しくなったとのことです。
「放置したい」と思ったこともあったそうです。
その後、人気テーマSWELLとの業務提携を経て、エックスサーバーに事業譲渡されることになりました。
Cocoonはダウンロード数が200万件を超える人気WordPressテーマです。
売却すれば高く売れることだろうと、推測されます。
また、Cocoonには、いずれも「事業譲渡後は有料テーマ化したい」という事業譲渡提案がいくつかあったそうです。
しかし、わいひら氏は、2つの理由で今回の事業譲渡のかたちにしたとのことです。
- Cocoonテーマ事業の継続性を強化したかった。
- Cocoonは、どうしても無料テーマということにこだわりたかった。
特に2番目については、わいひら氏は以下のように述べています。
Cocoonを公開してから現在まで以下のような声を、かなりいただいていたからです。
・無料テーマのCocoonきっかけでサイトを始めて収益化に成功しました
・お金のない時にCocoonでコストを低くサイト運営を始められて助かった
・最初どうしてもコストをかけられずCocoonで始めたサイトだけど今は仕事にまでなっている
こういった「手軽に始められるきっかけ作り」がCocoonの存在意義とも感じるようになったからです。実際、僕も無料製品がきっかけでプログラミングを始めて、Cocoonを作るに至りました。
Cocoonをエックスサーバーに事業譲渡した理由(Cocoon公式サイト)
無料化にこだわりここまで続けてきたのは、並大抵のことではなかったと思います。
人気もあるので、有料化すると収益も上がるし、ずっと楽になっていたことと思います。
私もCocoonきっかけでブログを始めた一人です。
相当な数の方がCocoonをきっかけにWordPressサイトづくりをはじめており、Cocoonの無料提供がWordPressインフラサービスの向上に大きく貢献したことは間違いないと思います。
また、無料なのに高機能の素晴らしいテーマがあることで、有料テーマの質の向上にも影響を与えてきたと思います。
今後のCocoonに期待
Cccoonが譲渡されたことは衝撃でしたが、エックスサーバー社もわいひら氏の意向を尊重して受け継いでいくとのことでよい選択が行われたと思います。
Cocoonの事業継続が安定的になり、わいひら氏の負担も軽減されたことと思います。
Cocoonユーザーも安心して利用を続けられます。
また、たぶんエックスサーバー社から継続的に報酬も支払われ、エックスサーバー社のスタッフもCocoon事業に関わることと思いますので、開発力アップが期待できます。
また、エックスサーバー社としては、サーバー事業への波及効果があり、無料提供することでイメージアップにもつながることと思いますが、Cocoon事業は直接的に収益増につながるものではないので、企業としての懐の深さを感じました。
以下はCocoonの更新のコードを公開しているサイトです。
エックスサーバーとCcoonの両方の名前が併記されています。
エックスサーバーの「WordPressテーマインストール」機能について
エックスサーバーでは、Cocoonの事業譲渡と同時に、Cocoonを簡単に利用できる「WordPressテーマインストール」機能の提供を開始しました。
エックスサーバーの管理パネル>WordPress簡単インストールで、Cocoonを選択してWordPressをインストールすれば、同時にCocoonがインストールされます。
エックスサーバーでブログ作成を簡単にスタートする方法についてはこちらをご覧ください。
まとめ
Cocoonが無料で提供され続け、人気テーマに成長してきたのは、開発者わいひら氏のこだわりや強い思いがあったからだと改めて考えさせられました。
わいひら氏は、Cocoonのサポートフォーラムでも質問に対して直接、丁寧に回答するなど、無料とは思えない対応を行っていました。
半面、ブロックエディターの標準化もあって個人開発の限界を超えていたのだと思います。
所有権が移り、開発環境が変わったと思いますが、今後のCocoonの更なる進化を楽しみにしています。